私が初めて「手のひらの赤ちゃん」を読んだのは娘たちがNICUに入院している時でした。
娘たちが未熟児で生まれる前はNICUの知識は全くなく、小さく生まれた赤ちゃんにどんなリスクがあるのかどんなケアを施されるのか全然知りませんでした。
実際に我が子が1000g以下の超低出生体重児で生まれてきてから、実体験とともにNICUの様子や他の小さく生まれた赤ちゃんのその後の経過など気になるようになりました。
赤ちゃんが入院中は、ひたすら搾乳をして病院にいる我が子に母乳を届ける日々。
そんな時にネットで見つけたのがこの本でした。
この本は、22週と3日で325gで生まれてきた女の子と家族の実話が書かれています。
325g・・・想像もできないくらい小さいです。
普通の赤ちゃんの10分の1の大きさで生まれてきた奈乃羽ちゃんが一生懸命生きていたこと、それをサポートする家族の愛やNICUの看護師さんたち、病状によっての処置など細かく書かれています。
私が最初に読んだときはまだ娘たちが入院していて、娘たちも未熟児特有の病気や症状もあり、同じような境遇に共感できるところもありました。
小さく生まれた時から、いや生まれる前から〝生きて生まれてくれますように〟という気持ちで生まれてからも〝こんなに小さく生まれてちゃんと生きれるかな〟という心配や不安が、私自身もたくさんありました。
出産後は新生児科の先生たちに救命してもらい、たくさんの管に繋がれて頑張っていました。
生まれてきてからもたくさんの山があり、一日一日を無事に過ごせることが何よりでした。
次から次へと治療が続き、体調も良くなったり悪くなったり一進一退の状態が続いたり、体重も栄養がうまく取れるようになるまではなかなか増えませんでした。
やっと1000gを超えた時には本当に嬉しかったです。
そんな経験をしている時に、この本を読んだので正直とてもこわくなったのを覚えています。
本に出てくる奈乃羽ちゃんは未熟児網膜症をはじめ小さく生まれたが故のたくさんの病気と戦います。
小さくても一生懸命に治療を頑張りそれを支えるママの愛は本当に偉大だと思いました。
奈乃羽ちゃんのママが、どんなに自分が疲れていても心配で病院に会いに行くという話がなんどもありました。
この本を読んでいるときはつい自分の子供のことと重ねて考えてしまう時もあり、読みながら不安になることも多かったです。
なので、NICU入院中に読んだことは少し後悔しました。
NICUの入院中の話がほとんどなので良くなるときは一緒に嬉しい気持ちになるのですが、受け入れなければいけない悲しいこともあります。
そういうのを読んだ時には気持ちを保つのが大変でした。
著者は芸人の高山トモヒロさんですが、もともと交流のあった幸田敏哉さんとその奥さんとの間に生まれたのが奈乃羽ちゃんだそうです。
不妊治療でやっと生まれてきた赤ちゃんの生きた証としてこの本を出版することになったそうです。
この本の中には、奈乃羽ちゃんの他に一緒にNICUで頑張った遥くんや双子の果穂ちゃんと真一くんの話も出てきます。
それぞれの病気があり、それぞれの家族がいます。難しい選択を迫られることもあります。母としての思いや家族の意見、みんなそれぞれ赤ちゃんを想っています。読みながら色々考えてしまうこともたくさんありました。
普通に子供を授かりなんのトラブルもなく出産して子育てをしていると、NICUの存在すら知らないで生活している人も多いと思います。
こういった小さく生まれた赤ちゃんの実話がたくさんの人に届けばいいなと私も思いました。
娘たちが退院した今、落ち着いて読むことができましたが、改めて生まれてきてくれたことに感謝して生きていてくれることは奇跡の連続だと思い直すことができました。
入院中は、口からミルクを飲めるようになったことに喜び、ウンチが出たことに喜んでいましたが、だんだんそれが普通になってしまうとその時の気持ちを忘れてしまいます。
普通に生きていることがどれだけ凄いことなのか忘れないでいたいなと思いました。
本の中にも一部でてきましたが、最近は子供を虐待するという悲しい事件を度々ニュースで目にします。
一生懸命生きようと頑張っている命やそれを守ろうと必死に頑張っている医療関係者や家族がいる一方、簡単に子供の未来を奪ってしまうような事件や事故もあります。
そのような事件や事故が一日でも早くなくなってほしいです。
この本を読んで今一度、隣で寝ている我が子をぎゅーっと抱きしめたいと思いました。
小さな命が少しでも多く助かりますように。